2025.11.14

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【医師監修】いびきを治す方法|今日からできる対策と睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療を徹底解説


いびきは、ご自身では気づきにくいものの、ベッドパートナーの睡眠の質に影響を与える可能性があります。また、場合によっては深刻な健康リスクにつながることもあります。本記事では、いびきのメカニズムから自宅でできるセルフケア、医療的な治療法まで医師が詳しく解説します。

いびきとは、睡眠中に呼吸をする際に発生する音のことです。喉や鼻の粘膜、舌などの組織が振動することで、「ゴーゴー」「ガーガー」といった特徴的な音が生じます。

いびきは本人が気づきにくい症状ですが、同室で寝ているパートナーや家族の睡眠を妨げるだけでなく、睡眠時無呼吸症候群(SAS)などの深刻な健康問題のサインである可能性もあります。

いびきの音が発生する仕組み

睡眠中は全身の筋肉が弛緩するため、舌や喉周辺の筋肉も緩みます。その結果、気道(空気の通り道)が狭くなり、呼吸時に空気が通過する際、周囲の組織が振動していびきの音が生じます。

いびきは、何らかの原因で気道(空気の通り道)が狭くなることで起こります。狭くなった気道を空気が通る際に、周囲の組織が振動し、あの特徴的な音が発生するのです。

いびきをかきやすい人の特徴

以下のような特徴がある方は、いびきをかきやすい傾向にあります。

  • 肥満傾向・体重が増えている方
  • 顎が小さい方(骨格的な問題)
  • アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎がある方
  • 喉の形がもともと狭い方

「問題ないいびき」と「危険ないびき」

いびきには「問題ないいびき」と「危険ないびき」の2種類があり、それぞれの特徴が異なります。ご自身がどちらに該当するのか確認してみましょう。

◆問題の少ないいびき

  • ・風邪をひいた時だけいびきをかく
  • ・お酒を飲んだ時に一時的にかく

◆危険ないびき

  • ・毎晩いびきをかく
  • ・途中で止まって、また再開する
  • ・年々ひどくなっている

自分ではなかなか気づきづらいものですが、以下のようなサインがある場合は注意が必要です。

  • ・朝起きた時に口が乾いている
  • ・睡眠時間をしっかり取っているのに疲れが取れない
  • ・日中とても眠い
  • ・過去にいびきを指摘されたことがある

◆病院を受診すべき症状

以下のような症状がある場合は、早めに受診することをお勧めします。

  • ・常にいびきをかいている
  • ・パートナーから「呼吸が止まっている」と指摘される
  • ・睡眠時間は十分なのに日中の眠気が強い
  • ・年々いびきがひどくなっていると言われる

◆睡眠時無呼吸症候群(SAS)の可能性

上記の症状がある場合、単なるいびきではなく、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の可能性があります。これは治療が必要な病気ですので、専門医の診察を受けましょう。

(1) 横向き寝の実践

いびきをかく方は、横を向いて寝るといびきが楽になることがあります。抱き枕や横向き用の枕を使用すると、横向きの姿勢を保ちやすくなります。

(2) 適切な枕の高さ

仰向けで寝る場合は、立った時と同じ頭の高さになるように枕を選びましょう。高すぎても低すぎても気道が狭くなる原因となります。

(3) 体重管理

体重が増えてしまった場合は、ダイエットに取り組むことでいびきが改善することがあります。

(4) 飲酒の控え

寝る直前にお酒を飲まないことが重要です。アルコールは筋肉を弛緩させ、気道を狭くする原因となります。

(5) 禁煙

喫煙は気道の炎症を引き起こし、いびきを悪化させる可能性があります。

(6) 鼻呼吸の習慣化

鼻づまりを感じている方は、耳鼻科を受診して鼻の治療を受けることをお勧めします。鼻の通りが悪いと口呼吸になり、いびきの原因となります。

(7) 口周りの筋トレ

口周りや舌の筋肉を鍛えることで、気道の開通性が改善する可能性があります。

(8) 寝る前の鼻づまり対策

アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎がある場合は、しっかりとした鼻の治療を行いましょう。

市販グッズの活用も有効

市販の口テープも効果がある場合があります。ただし、使用前に医師に相談することをお勧めします。

いびきをかいている = SASというわけではありません。ただし、SASの人はいびきをかいている可能性が高いです。また、SASでもいびきをかかずに呼吸が止まっていることもあるため、実際に呼吸が止まっているかどうかは検査をして調べる必要があります。

◆SASの健康リスク

SASは血液中の酸素濃度が下がってしまう病気(睡眠中に気道が閉塞し、無呼吸・低呼吸が繰り返されることで、血中酸素が低下し、睡眠が分断される疾患)です。これにより、以下のような健康リスクが高まります。

◆放置することの危険性

SASを放置しておくと、心疾患や脳血管疾患によって寿命が短くなり、死亡率が上がります。これが最も怖いリスクです。

※参考:睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診察は3つの検査を行います。

(1)簡易検査

自宅で行える検査です。鼻、胸、指にセンサーをつけて、1〜2晩検査を行います。いびきや無呼吸の状態を測定することができます。

(2)精密検査(PSG検査)

簡易検査を行ったものの、検査スコアがCPAP治療の適用になるか判断ができない人は精密検査(PSG検査)を行います。脳波を測定できるので、寝ているときと起きているときを判別していびきや無呼吸を測定することができ、睡眠の質も測定できます。

(3)内視鏡検査

鼻や喉の形を見る内視鏡検査を行うこともできます。気道の狭窄部位を直接確認することができるため、簡易検査前にSASの可能性をある程度予測することができます。

検査の流れ

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査に関しては以下の流れで行います。

  1. 問診・診察・内視鏡検査
  2. ご自宅で簡易検査
  3. 必要に応じてPSG検査
  4. 検査結果の説明と治療方針の決定

※参考:検査・治療の流れ

◆CPAP療法

CPAP(シーパップ)療法は、中等度から重度のSASに対する標準的な治療法です。鼻もしくは口に酸素マスクのようなマスクをつけて、そこから圧力をかけた空気を送り込みます。これにより、狭くなった鼻や喉の部分を広げる効果があります。CPAP治療の特徴は以下の通りです。

  • ・効果が高い
  • ・装着に慣れるまで時間がかかる場合がある
  • ・継続することが重要

◆マウスピース治療

上顎の歯に装着し、下顎を前方へ誘導する治療法です。顎を前方に移動させることで、気道の通り道を広げます。マウスピース治療が適用される人は以下の通りです。

  • ・軽度から中等度のSAS
  • ・顎が小さい方
  • ・CPAP療法が合わない方

◆外科手術

外科手術は、気道を塞ぐ部位を取り除く根治療法ですが、手術によってSASが改善される可能性がある方のみ適応となります。気道閉塞の原因が大きな扁桃腺、アデノイド、鼻中隔弯曲症など、手術によって改善が見込める場合やCPAP療法やマウスピース治療などの保存的治療が継続困難、または効果が不十分な場合に手術治療が検討されます。

いびきは自分では気づけないこともありますが、ベッドパートナーが困る問題でもあります。お互いの関係を良好に保つためにも、また、いびきが怖い病気につながる可能性もありますので、気になる症状がある方は一度検査を受けてみることをお勧めします。重要なポイントとしては

  • ・いびきは気道が狭くなることで起こる
  • ・毎晩いびきをかく、呼吸が止まるなどの症状は要注意
  • ・セルフケアで改善できることも多い
  • ・SASの可能性がある場合は早めの受診が大切
  • ・適切な治療により、生活の質が大きく改善する

です。当クリニックでは睡眠の専門医による睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査を行っています。いびきに悩んでいる人はお気軽にご相談ください。


参考

コラム監修者

井坂 奈央
睡眠センター長 医学博士
井坂 奈央
〈認定資格〉
日本睡眠学会総合専門医
日本耳鼻咽喉科学会耳鼻咽喉科専門医

〈経歴〉
初期研修終了後、東京慈恵会医科大学
耳鼻咽喉科学教室に入局
耳鼻咽喉科専門医を取得
太田睡眠科学センターで睡眠専門医を取得
大学病院勤務を続けながら医学博士を取得
身近に患者の睡眠問題と向き合うため、Dクリニック東京ウェルネスで睡眠外来を行う