2025.11.13
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鼻が原因のいびきとは?鼻づまりといびきの関係を睡眠専門医が解説
いびきに悩んでいる方の中には、鼻づまりが原因でいびきをかいているケースが少なくありません。鼻と睡眠の質には深い関係があり、鼻呼吸が妨げられると、睡眠の質が低下し、さまざまな睡眠障害につながる可能性があります。今回は、睡眠専門医が鼻づまりといびきの関係について詳しく解説します。
目次
1. なぜ鼻づまりがあるといびきをかくのか
鼻づまりがいびきを引き起こすメカニズ
鼻が詰まると口呼吸になり、舌が喉の奥に落ち込みやすくなります。また、鼻呼吸ができないことで上気道の抵抗が増加するため、いびきが発生しやすくなります。
鼻呼吸と口呼吸の違い
基本的に人間は鼻呼吸が自然な状態です。鼻呼吸をすることで以下のような効果があります。
- ・湿度の保たれた空気が肺に入るため、乾燥した空気による刺激を防ぐ
- ・脳を冷やす効果があり、質の良い睡眠につながる
研究結果では、鼻呼吸をすることで質の良い睡眠がとれることが複数の研究で示されています。実際に鼻づまりがあると睡眠の質が下がるという研究結果も出ています。
鼻が原因のいびきの特徴
こんな症状はありませんか?いずれかに当てはまっている人は鼻が原因のいびきかもしれません。
- ・口を開けていびきをかいている
- ・いびきの音が鼻の方で鳴っている
- ・鼻声になる
- ・朝起きたときに口が渇いている
2. いびきの原因になる鼻の病気

いびきにつながる鼻の病気には、以下のようなものがあります。
アレルギー性鼻炎(花粉症など)
季節性があるアレルギー性鼻炎の場合は、一時的な鼻づまりですが、通年性のアレルギー性鼻炎の場合は慢性的に鼻づまりを引き起こします。
鼻中隔弯曲症
鼻の真ん中の骨が曲がっている状態で、慢性的な鼻づまりの原因となります。
副鼻腔炎(蓄膿症)
昔から一般的には蓄膿症と呼ばれている病気で、慢性的な鼻づまりを引き起こします。
鼻の腫瘍
稀ではありますが、鼻の腫瘍も鼻づまりの原因となることがあります。
一時的な鼻づまりと慢性的な鼻づまり
- 一時的な鼻づまり:花粉症などのアレルギー性鼻炎
- 慢性的な鼻づまり:鼻中隔弯曲症、副鼻腔炎
3. 鼻が原因かどうかの診断方法

アレルギー性鼻炎の場合は、薬で治療して鼻づまりといびきが治れば鼻が原因とわかります。
ただし、実際にはいびきは鼻だけが原因ではないことが多く、鼻と喉、鼻と喉と顎が複合的に原因になることが多いため、内視鏡検査で総合的に評価することが重要です。
鼻腔内視鏡検査でわかること
鼻腔内視鏡検査では以下のことを確認できます。
- ・鼻の中の形
- ・鼻の粘膜の状態
- ・鼻の通り具合
鼻づまりがあり、いびきをかく人は一度鼻腔内視鏡検査をお勧めします。
4. 鼻づまり改善でいびきは治る?

鼻だけが原因だった場合は、鼻の治療でいびきが改善するケースもあります。例えば、鼻が曲がっている(鼻中隔弯曲症)の場合は、手術をすることで治ることもあります。ですが、鼻の治療だけでは不十分なケースもあります。
鼻の治療だけでは不十分なケース
いびきの原因が鼻だけでなく、以下のような複合的な要因がある場合は、鼻の治療だけでは不十分です。
- ・喉の問題
- ・骨格の問題
- ・肥満
この場合は鼻の治療だけでなく、要因に合わせた治療のアプローチが必要です。
5. 治療アプローチ
鼻詰まりの治療は薬で治療を行う場合と手術で行う場合があります。
薬物療法
アレルギーが原因の場合は以下のような薬を使用します。
- ・抗ヒスタミン薬
- ・点鼻薬
- ・ステロイド
- ・血管収縮薬
注意:血管収縮薬は乱用すると効果がなくなったり依存性があるため注意が必要です。
手術療法
薬物療法でも効果が見込めない場合や、鼻中隔弯曲症など骨格が原因の場合は、鼻の手術(鼻中隔矯正術 など)を検討することもあります。症状に応じて医師に相談してください。
鼻の治療とSAS(睡眠時無呼吸症候群)治療の優先順位
鼻詰まりの治療は薬物療法から始めるため、SAS治療と並行して治療を行うことを推奨します。鼻の治療はCPAP、マウスピース、減量療法などと組み合わせることが可能なため、鼻の治療と同時に行うことでSAS治療全体の効果が高まる場合もあります。
6. 鼻づまりといびきの両方に悩んでいる方へ
鼻の症状があるときに受診してもらうと鼻が原因かどうかの判断がしやすいので、いびきや無呼吸があって、鼻づまりがある方は、まずは専門医へ相談してください。
鼻づまりは、いびきや睡眠の質に大きく影響を与える要因の一つです。鼻呼吸は人間にとって自然な呼吸法であり、質の良い睡眠には欠かせません。
もし、いびきと鼻づまりの両方に悩んでいる場合は、自己判断せずに専門医に相談することが大切です。適切な診断と治療により、快適な睡眠を取り戻すことができるでしょう。
参考
日本睡眠学会「睡眠と呼吸に関する研究」
厚生労働省 e-ヘルスネット「睡眠と生活習慣病との深い関係」
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「アレルギー性鼻炎について」
日本睡眠学会「睡眠時無呼吸症候群(SAS)診療ガイドライン」
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「副鼻腔炎について」
コラム監修者
日本耳鼻咽喉科学会耳鼻咽喉科専門医
〈経歴〉
初期研修終了後、東京慈恵会医科大学
耳鼻咽喉科学教室に入局
耳鼻咽喉科専門医を取得
太田睡眠科学センターで睡眠専門医を取得
大学病院勤務を続けながら医学博士を取得
身近に患者の睡眠問題と向き合うため、Dクリニック東京ウェルネスで睡眠外来を行う